カテゴリー
卑猥

河原町のカエル娘

今日は本当にラッキーな日だった。
そして今日ほど日記をつけていてよかったと思った日は、ない。
学生時代、ちょっといいなと目をつけていた子に街で再会したのだ。
明らかに、彼女は僕のことや名前も忘れている様子だった。

名刺を渡すも、彼女から名刺はくれない。
警戒しているのか、それとも当時同様「タイプじゃない」と判断されたのか。
しかし、僕も彼女を責められない。
実は、彼女の名前を忘れてしまっていたのだ。
それが、日記を取り出してようやく判明した。
ああ、そうだ。
そんな名前だった。
懐かしい当時の記憶が、当時の僕の悪筆から蘇ってくる。
もっとも、日記は人に見せるものではないにしても。
「河原町で酔っぱらって百貨店の壁に激突するなんて、男前だ」自然に思い出し笑いが浮かぶ。
股も全開で壁に自ら激突したあのカエルのような姿。
でも一緒にいた美少女の友人は、密かに僕の隣で嘲笑っていた。
その笑った横顔は、正直醜かった。
オンナの優越感が丸出しだった。
まだ大学生だというのに、まだ20歳だというのに、早くもオンナの毒気を振り撒いているのだ。
そして自分の「美貌」の価値を過信してもいた。
その「美貌」にひざまずくオトコは多いだろう。
でも、僕には僕の心には反発心しか起きなかった。
比べて、あのカエル娘。
壁に激突した後、ひっくりかえってスカートがまくれあがってしまうというアラレモナイ姿。
通行人のおじさまたちが、彼女に声をかけていく。
「姉ちゃん、パンツ丸見えやでぇ」と。
「あたしは、今人生の深淵を噛みしめているんですよ!」と誰に言うともなく叫ぶ泥酔した彼女。
最悪だ。
でもその滑稽を極めた姿に、当時僕の心は撃ち抜かれたのだった。