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出会い

一目ぼれは突然だから一目惚れ

ついに運命の人に出会った。
今日ほど英語を学習していてよかったと思ったことはない。
京都にある社会人サークル。
ラジオ英会話講座を、寄り集まって学習しましょう、というお堅いものだ。
初日の今日は本当に緊張した。

だって集った面々は知性派揃い。
日本最高級の偏差値を誇る地元の国立大学をご卒業した秀才揃いだ。
若干閉鎖的なコミュニティだと思わないでもない。
なぜなら、私同様、そこまで偏差値の高くない、ってか端的に言えば「おばか」は少数派。
少々浮いた存在だ。
彼らが思いっきりはじけたゲームは「古今東西」。
渋い時事的な回答が次々と飛び出す。
負けじと私も「ソ連!」と思いっきり知的な回答を叫んだ。
ふふふ…我ながら冴えてるぅ!と口の端に笑みすら浮かぶ。
すると一同は顔を見合わせ、気まずい空気に…。
「ソ連って今はないよね」「ロシアってことで正解にしましょう」と寛大な笑顔をメンバーたちは交わす。
あああトラウマになりそう。
屈辱だけがお土産かと思った、その時!白馬の王子が、そこに!!目が釘付けになってしまった。
嘘でしょう?頭の偏差値は高くても、容姿面で残念なメンツばかりのこのサークルに…
その人は、例にもれずエリートだった。
しかも同年代なのに、まだ学生でなんと理学部。
帰りのおうどん屋さんで一緒のテーブルに座れたことは、生涯の幸運だった。
隣の「低身長をバネにガンバリました」タイプの人の良さそうな男性が、ペラペラと紹介してくれる。
たおやかな京男なのにがっしりした鳩胸。
丹精な顔付は完全なる左右対称。
理系には、オタクタイプが多いのだが、彼は違う。
初参加で緊張している私の委縮が解けるよう、何気なく会話に入れてくれる。
こんな人、いたんだ…。
高嶺の花には違いない。
私は己をよく知っている。
ムリな獲物は狙わない。
でもこんなお宝を見せられて、「はい、さようなら」と引き下がれるだろうか?すぐに頭から追い払えるものだろうか?難しい。

郊外よりも

彼は今頃どうしているのかなあと思った。
なんと探偵事務所を活用して、彼の所在を突き止めた。
転職し、商社マンとなっていた。
まだ独身らしい。
お父様は既にお亡くなりになっていて、お母様と同居されているとかなんとか。

ネットで検索した北品川のマンションはしょぼかった。
まあ、東京23区で山手線沿いだとああなるんだ。
大阪の田舎とはいえ、学研都市風の広々とした高級住宅地で育った私にはピンとこない。
まあ、なんてたって東京ですからねぇ。
そしてその立地から想像した。
母親主体の家庭だと、きっと同じ予算で郊外に戸建を建てただろう。
それをしなかったのは、おそらく父親主体のご家庭だったのでは、と。
何より通勤時間を短縮できるから、家族の時間にあてられたんじゃないだろうか、と。
合理的だし、どっか父権的な雰囲気を醸し出す彼のイメージに沿っていた。
厳格な家庭だったのか、それとも和やかだったのか、その両方か。
いつごろ亡くなられたんだろう?だから最初妻帯者に見えていたんだろうか?兄弟姉妹は?。
いかんせん情報が少なすぎる。
ちなみに自慢だが、私は兄弟姉妹当ての権威だ。
的中率は80%を超える。
だいたい20~30分いただければ、家族構成が当てられる。
長年培った自慢のコンパ芸。
残念というより、無念だった。
こんなに興味を抱いた人物の情報を一切持てないなんて。
彼はどんな子どもだったのだろう?初恋はどんなだったんだろう?趣味はサッカー。
これは知ってて、興味はない。
大学時代は?初めておつきあいした女の子ってどんな人だったんだろう?いろいろなクエスチョンマークが渦を巻くけれど、その答えは、グーグル先生だって教えてくれない。