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指輪

私は彼からのメールの数々を書き留めた。
一人の男の恋の苦悩を芸術作品へと昇華するのだ。
ああ、これをどうやって写真に収めたらいい?舌なめずりしそう。
積わらの連作を描いたとき、画家の頭にはすでに明確なイメージがあったはず。

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愛犬

とっさに5階のベランダから飛び下りる自分の姿が浮かんだ。
でも、腕には赤ちゃんがいるから、できない。
電気ショックを浴びたように、北極で氷水に浸かったように体中の神経細胞が開く。
「どうして」と声にならない声が出る。

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柳の腕

私は彼が恐かった。
近寄られると歯の根が合わないほど怯えた。
職場だったし、彼は紳士だったしこれは妙な現象だ。
今にして思えば、わたしの恐怖の正体は単純だ。
三人称単数で生きてきた、人生の傍観者たる私を、彼なら簡単に暴いてしまうだろう。

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しゃべりすぎたオンナ

そういえば。
わたしは彼とつきあっている頃、自分の話ばかりしてしまっていた。
私は話し手で、彼は聞き手。
だって彼といると妙に居心地が悪かったのだ。
わたしは生粋の大阪人で、彼は東京の人。
話のノリがまったく噛み合わない。