騙そうと思った訳じゃあない。
修羅場を経験したかった訳でもない。
だが、彼女は派遣終了日だった今日、突然家に乗り込んできたのだ。
どうやって知ったのだろう?そういや最近、日記を兼ねてつけている手帳を、職場のお局に拾われたことがあった。
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彼女に頼まれたからって、断るべきだった。
僕の額には冷や汗を通り越して脂汗が浮かぶ。
「中学、高校時代僕もバレー部だったんだ」。
なんて嘘、つかなきゃよかった。
話、合わせなきゃよかった。
後悔後にたたず、いや先に立たずだったっけ。
もう腹立ちが限界に達してきた。
ファミレスでもう一時間近く彼女を待ちぼうけだ。
隣の席では、カップルが話し込んでいる。
どうやら初めてのデートってとこらしい。
男が語る、幼い頃より日記をつけてると。
あの世界的スターのネズミに会いに行きたい、とまたも彼女は言いだした。
もういいだろう。
怒鳴りそうにすら、なる。
「シーズンごとにパレードが変わるのよ。
「見て~わたしの今月の占い!赤い糸の運命の相手と出会いますだって」。
コンビニで一緒に立ち読みしていた彼女が奇声じみた声をあげた。
未購入の雑誌を大きく開いて僕に見せる。
「どうする~?わたしが他の男性と赤い運命の糸で結ばちゃったら?」。